いつかやってみてーな
真のゾーンに到達した火神と誠凛選手たち。
火神と黒子は赤司のディフェンスを抜き、反撃に出る。
しかし、洛山選手も赤司の能力によりゾーンに近い状態。
赤司を抜いたが、根武谷、葉山が火神の前に立ちはだかる。
真のゾーンとは、ゾーン状態の火神の動きに他の選手が合わせることで完成する。
しかしその動きは、考えていては間に合わない。
最小限のアイコンタクトと、これまで築いてきた絆の力が真のゾーンには不可欠だ。
『ゾーンに入った火神のスピードに合わせるには考えていたら間に合わない。考えるな・・直感に委ねるんだ!出来るはずだ。信じろ!オレ達の絆を!!』
木吉は火神と一瞬のアイコンタクトを交わすと、目にも止まらぬ速さで火神とのパスコンビネーションを繰り出す。
その動きに根武谷、葉山は全く対応出来ない。
一瞬で二人を抜き去ると、火神はそのままアリウープを決めた。
驚愕する洛山高校、そして会場もその信じられない動きに沸き立った。
残り時間1:21 誠凛98-洛山103 点差は5点。
「ゾーンの速さの連携・・・なんて。まさか。そんなことが・・・」
黛と実渕は目の前で起きたことが信じられなかった。
『これがあの扉の先・・・ゾーンを超えたゾーン。・・いや、むしろこれが本来あるべきカタチ。真のゾーンなのか-----!』
自身が開くことの出来なかったゾーンの先。
それを開いた火神を、赤司は驚きの表情で火神を見ていた。
「ちっ。やっぱ勝てねーかもしんねーなー。【オレ一人】じゃ・・・」
会場で見ていた青峰がつぶやく。
「・・・うん。そーだね。・・・大ちゃん」
桃井が青峰の心中を察したかのように返事をした。
「見ててワクワクする。帝光の強さは相手の心を折る冷酷な強さだった。バスケやめちまった奴もいたし、オレもすぐには立ち直れなかった。誠凛は強いけど・・・勝っても負けてももっともっとバスケが好きになる。いつかやってみてーな、アイツらと。」
声援を送った荻原が、立ち直った誠凛の姿を見つめていた。
百年早い
「ディフェンス絶対止めんぞ!!」
日向が誠凛の選手を鼓舞する。
日向の相手は実渕。
4ファウルの日向はファウルをすれば即退場となってしまう。
実渕の【天】【地】【虚空】の3ポイントシュートに対応するには、細心の注意が必要だ。
『集中しろ!重心の変化を見落とすな!!ここで退場なんてしたら全部パァだぞ!!』
日向は実渕を前に、ここ一番の集中力を見せる。
実渕がシュート体勢に入る。
【天】のシュートと判断した日向がブロックに飛ぶ。
しかし、それはフェイクだった。
実渕はドリブルで日向をかわすと、すかさずジャンプシュートの体制に入った。
「パスだ実渕!!そこは罠だ!!」
赤司の声と同時に、実渕の頭上には火神のブロックが迫っていた。
すかさず根武谷にパスを出す実渕。
だがそこには擬似エンペラーアイで先を読んだ黒子が待っていた。
実渕から根武谷へのパスは黒子によってカットされ、誠凛の反撃が始まる。
火神を起点に凄まじい速さの連携を見せる誠凛。
「日向だ黛!!」
エンペラーアイを持つ赤司だけが唯一その動きの先を読むことが出来るが、洛山の他の選手は対応しきれない。
パスが日向にわたると、すかさずシュートを撃つ。
しかしギリギリのところで、黛にブロックされてしまった。
すさまじい攻防を見せる両チーム。
「・・・だが押しているのは誠凛だ・・・。赤司がエンペラーアイでサポートしているが、それでも誠凛の連携速度がわずかに上回っている。」
緑間が攻防を冷静に分析する。
誠凛がもう一度洛山の攻撃を防ぐことが出来れば、次は得点できる可能性がある。
そうなれば3点差。
射程圏内になる。
「止めれば勝利が見える!!ふりしぼれ!最後の一滴まで!」
日向が全員に激を飛ばす。
必死のディフェンスを見せる誠凛。
しかし、そこに立ちはだかるのはやはり赤司だった。
自らボールを持つと、ディフェンスに入った火神をアンクルブレイクで転ばせる。
そして、シュートを放った。
「勝つのは・・・オレだ。王を討つなど百年早い!」
赤司の放ったシュートはゴールへと吸い込まれた。
残り41秒 誠凛98-洛山105
あまりにも重い失点だった。