怪物
キセキの世代の最後の夏が始まった。
全中地区予選緒戦。帝光はこれまでと比べ物にならない強さを見せた。
スコアは109-5。キセキの世代は怪物と化していた。
しかしそこに笑顔は無かった。
パスプレイは存在せず、各々が勝手に点を取るだけで相手を圧倒する。
しかも、以前より遥かに圧倒的に。
万に一つも負けることはない。黒子も試合に出ることはあるが、それは主力を温存するためだ。
桃井は、黒子の笑顔もずっと見ていないことに気づいた。
暇つぶし
更衣室では、相手が弱すぎて試合がつまらない、と、紫原と青峰が話していた。
そこに黄瀬がある提案をもちかける。
「次の試合、誰が一番点を取れるか勝負しねっスか?」
青峰は、暇つぶしになるならそれでいいと同意し、赤司もそれでやる気がでるなら、自分もやろうと乗ってきた。
一方、荻原擁する明洸中学も緒戦を突破していた。
次の試合が始まり、試合中にも関わらず、点数の競い合いをするキセキの世代。
相手がそれに気付くものの、為す術は無かった。
そして黒子もそれに気づいた。
試合後、黒子は尋ねた。
「なぜあんなことをしたのですか?ボクは何か・・違う気がします」
その質問に対して、ただの遊びだと答える黄瀬。
「でも・・・あんなやり方は相手に失礼だと思います・・・」
と、黒子は反論するが、それに対して青峰は言った。
「なんでだよ逆じゃねーの?ザコ相手にやる気出す為の遊びじゃねーか」
いいなぁ・・・
試合が終わり、ミーティング場所へと向かう帝光中。
途中、誠凛高校バスケット部とすれ違うのだった。
高校インターハイの予選も同会場で行われているのだった。
ふと、黒子が生徒手帳が落ちているのを見つける。
先刻すれ違った、誠凛高校のものだった。
届けに行ってくるという黒子に、桃井もついていくように赤司が指示を出した。
試合会場につくと、試合はすでに始まってしまっていた。
桃井が、係の人に届けておこうと黒子に言うものの、黒子は試合から目を離さなかった。
そこには、チームプレイで戦う誠凛高校の姿があった。
懐かしむような視線でみつめる黒子。
桃井はその様子を見て黒子に言った。
「なんか・・いいチームだね・・」
「・・・はい。きっとあの人達はバスケに全力で取り組んでいて、バスケが大好きなんだと思います。いいなぁ・・・・と思います」
その後、誠凛高校は主力の怪我により敗退した。
帝光は、昨年をはるかに超える大差で全中出場を決めた------