手がかり
実渕の【天】のシュートに反応したものの、惜しくも止めることが出来なかった小金井。
会場は、実渕のスリーポイントがブロックされかけたことに驚きを隠せなかった。
「くっそぉー届かねー!!」
小金井は悔しさを浮かべていた。
実渕はそんな小金井をみて考えていた。
『決してナメたりしていたわけじゃないけど・・・【地】→【天】の切り換えに反応してくるとは、正直思わなかったわ』
その様子をベンチで見ていた日向は、小金井の動きを見てあることを考えた。
『本当にたまたまか・・・?実渕がノーフェイクで3種のシュートのどれかを撃って、コガがそれに飛びついただけならそうかもしれない。けど、あの時実渕は一瞬シュートにいくそぶり見せ、コガはそれに反応したように見えた。実渕にフォームにはカンに引っかかる何か変化があるんじゃないのか・・・!?』
これでも必死だよ
試合は誠凛の攻撃に移っていた。
黒子からのパスをセンターの木吉が受ける。
しかし根武谷が木吉のパスの前に立ちはだかる。
完全にシュートコースを塞がれた木吉に火神がフォローに入り、火神のシュートで得点を重ねた。
これまでは黒子のパスからシュートまで、前を塞がれることがなかった。
しかし、誠凛にはシューターがいない。
洛山は外からのシュートを警戒する必要はない。
そのため、センターポジションの木吉のマークである根武谷を大きく外すことが出来なかった。
根武谷が木吉を挑発する。
「なんだよオイ、ぶつかってくる気配ゼロじゃねーか。ずいぶんおとなしくなっちまったなあ」
挑発され、怒りをにじませる木吉をコガがなだめる。
「顔こえーってホラホラ、楽しんでこーぜ!」
そんな小金井を見て木吉が言った。
「楽しそうだな、コガ・・・・」
「え?そりゃあ・・お気楽にやってるわけじゃないし、これでも必死だよ。けど、試合出てプレイすんのは楽しいっしょやっぱ!」
小金井が笑顔で返した。
その小金井が対するは、無冠の五将実渕。
洛山の攻撃は、実渕へボールがわたる。
小金井慎二
再び、小金井と実渕の一対一。
実渕はパスを受けるとノーフェイクでシュート体勢に入った。
相手が動けなくるシュート【虚空】だ。
小金井はこれまでのことを思い出していた。
高校入学と同時に、中学時代に続けていたテニスはやめ、バスケ部に入部。
姉には、最初から楽しいばっかのスポーツはない。続けてみてわかることもある、と諭された。
バスケ部を選んだ理由は、友達の水戸部がやってるのを見て面白そうだったから。
だが、走ってばかりの練習、初心者のため、試合に出ても足を引っ張るだけ。
辞めようと思ったことが何度もあった。
そのたびに、水戸部に止められ、日向達にも止められた。
そのうちに、だんだんと足を引っ張らなくなっていた。
木吉が決勝リーグでケガをし全敗した時は、胸が痛かった。
すごい一年が入って、今年こそと思い挑んだ決勝リーグで再び全敗した時、涙が出た。
その頃には、もうとっくに、やめるなんて頭になかった。
続けてみて、いろいろ思うようになった。
あん時、水戸部ありがとーとか、こん時みんながいてよかったなーとか。
色々あったから・・・だから。
『何がなんでも勝ちてー!とか』
力を振り絞った小金井は、実渕の【虚空】のシュートに対してブロックに飛んだ!
全員が驚いた。何よりも実渕は驚きを隠せなかった。
だが、必死のブロックも間に合わず、ボールは無情にもゴールを抜けてしまった。
コガのおかげで
【天】に続き【虚空】を止めかけた小金井に、会場は、次は止めるかも、と期待を寄せる。
しかし、小金井と監督のリコはそうは考えていなかった。
むしろ、これでもう止められなくなった、そう考えていた。
小金井は、なんらかの方法で【虚空】の硬直状態から抜け出た。
しかし、それでも届かなかった。
つまり、反応は出来ても結局は止めることは出来ない。
この事実は、実渕は次から小金井の反応を気にすること無く、【虚空】を撃つことが出来る、ということだった。
リコはつぶやいた。
「意表をついたさっきが、最初で最後のチャンスだった」
それを聞いていた日向が反応した。