チームの両足
点差は17点差。
誠凛は有効な手を打てぬままジワジワと離されていくばかりだった。
誠凛の攻撃となり、日向にボールが渡る。
日向VS実渕。
実渕が日向のシュートタイミングを完全に捉えている。
日向はシュートが打てぬまま、インサイドの木吉にパスを出す。
木吉VS根武谷。
根武谷のパワーに対し、木吉も有効な攻め手が無く、シュートまで持っていくことが出来ない。
「一度戻せ木吉!立て直そう」
木吉のパスをアウトサイドで伊月が受け取る。
誠凛は有効な攻め手が無かった。
誠凛の選手一人一人の能力は決して低くない。
火神・黒子の一年コンビが目立つが、それだけで勝ち上がれるほど試合は甘くない。
黒子たちが思う存分活躍出来たのも、全ては二年生がいたからこそ。
全国クラスの実力をもった彼らがいたからこそ、ここまで勝ち抜いてきた。
そして、日向と木吉はアウトサイドとインサイドの要であった。
しかしこの二人がいま、完全に抑えられている。
これはチームの両足が折れるようなものであった。
力の差
ボールを受けた伊月は赤司を相手に必死のオフェンスを見せる。
しかし伊月は、力の差を感じていた。
『オレじゃ一矢むくいることすらできない・・・・!!ここまで差があるのかよ・・・!!』
伊月は福田にパスを出すが、疲れきった福田はパスをファンブルしてしまう。
福田の体力は降旗と同様に、すでに限界だった。
誠凛は福田に変えて同じ一年の河原を投入する。
しかし何か策があるわけではなかった。有効な手立ては無いのだ。
洛山高校は至って普通にバスケをしているだけで、特に何もしていない。
普通にバスケをしている相手に対し、特別な作戦は立てようがなかった。
葉山小太郎
洛山の攻撃へと変わり、葉山にボールがわたる。
葉山VS火神。
葉山は4本のドリブルで火神を抜こうとする。
しかし火神は葉山のコースを防ぎ、葉山を止めた。
しかしその直後、クロスオーバー(切り返し)した葉山に火神はあっさり抜かれ、葉山はシュートを決める。
爆音のドライブ「雷獣 葉山小太郎」
誠凛に攻撃が移り、火神がボールを受ける。
苦し紛れとも入れるミドルレンジからのジャンプシュートをねじ込み、点数を返す。
観客には誠凛が土俵際で粘っているように見える。
しかし。
単発でシュートが決まっても何も変わらない。
小兵が土俵際で頑張っても、結局は押し出されてしまうだけ。
その後も、洛山の攻撃に誠凛は為す術がない。
そして------
奇跡は起きない
赤司が黛に、目でパスを要求する。
黛は赤司の様子を見ながら思った。
『へぇ・・・珍しいな。テンション上がってんのか?いや・・・誇示か』
黛からのパスがゴールリングの手前に上がる。
そのボールめがけて赤司が飛ぶ。
誰もが驚いた。
空中でパスを受けた赤司は、黛からのボールをそのままリングに叩き込んだのだった。
赤司の身長は173センチ。普通ならダンクが出来るような身長ではない。
観客も、誠凛の選手も驚くしかない。
火神は信じられないという表情を浮かべていた。
「なん・・・・だと・・・・・・」
その言葉に赤司が冷静に反応する。
「お前ら大型選手の専売特許だとでも思ったか?こんなものやろうと思えばいつでもできる。」
観客席の紫原がつぶやく。