極限状態
『・・・限界だな』
『ふざけるな・・!僕が負けるなどありえない・・!試合はまだ終わっていない・・!!』
『諦めろ・・・お前ではもう勝てない』
『黙れ・・・・!僕は勝つ・・・。今までも・・・そしてこれからも・・・!!』
「征ちゃん!聞いてた今の話!?」
タイムアウト中のベンチで、実渕が赤司に話しかけるが、赤司にはその声が届いていないようだった。
誠凛が洛山に10点差にまで迫った後、赤司はまさかの大乱調。
赤司の連続ミスにより、点差は6点差にまで縮まっていた。
洛山高校がタイムアウトを取るかと思われたが、火神の体力を心配した誠凛が先にタイムアウトを取った。
誠凛は出来れば流れに乗ってそのまま押して行きたかったが、火神の体力は限界に近かった。
火神の体力を心配する監督のリコは、このままではとても最後まで持たないと考えていた。
「・・・・火神君」
心配そうな声でリコが火神に声を掛ける。
「交代ならしねーすよ。カントクだってわかってるはずすよ。今の流れは絶対に切ったらダメだ・・・!!どこまでもつかわからないけど、このままいかせてくれ」
リコの考えを見透かしたかの様に火神が答えた。
「・・・わかったわ」
賭けではあるが、賭けに出ずには勝てない。
リコは火神に賭けた。
そんな余裕は無いですから
タイムアウトが終わり、試合が再開された。
赤司は見るからに披露しており、精神的なショックも受けているように見えた。
それは攻撃パターンにも現れていた。
赤司から実渕へのパス。
赤司がワンマンで攻めるのを止めたのだった。
赤司のパスは実渕の頭上の上に飛んでくる。
実渕はなんとかそれをキャッチする。
『ひっどいパスねもう!!まるで別人から受けてるみたい。ストレスたまってしょうがないわ・・・!』
実渕は、赤司のひどい有様に苛立っていた。
パスを受けた実渕はすかさずスリーポイントを放つ。
相手から遠ざかりながら打つ【天】のシュートだ。
『天のシュート・・・!!くっそ反応遅れた!!だがこれは・・』
日向はボールの行方を見ていた。
ボールはゴールに弾かれ、実渕のシュートは決まらなかった。
司令塔赤司の乱調が、他の選手にも悪影響を与えているのだ。
リバウンドは誠凛が取り、すかさず誠凛の反撃となる。
洛山の選手もディフェンスに戻るが、赤司だけ戻りが遅い。
『ってオイ!?戻り遅っせーよカメか!マジなんなんだよ赤司---!!』
葉山は赤司の動きに苛立っていた。
赤司のいないスキを突き、伊月から日向へパスが回り、そのまま日向がレイアップを決める。
葉山は赤司を睨みつけ、いらだちを隠せない。
そんな赤司の様子を黒子は黙って見ていた。
「黒子。まさか赤司の心配をしているんじゃないだろうな。もしそうなら間違ってるぞ」
木吉が黒子に話しかけた。
「・・・・・・いいえ。そんな余裕はないですから」
1ゴール差
洛山の攻撃。
赤司のパスは、火神にカットされる。
洛山の攻撃はすでに形になっていなかった。
すかさず誠凛の反撃。
黒子のパスは、ゴールに向かって飛ぶ火神の手に吸い込まれていく。
火神はそのままゴールへと、ボールを叩き込んだ。
会場が息を呑んでスコアを見つめていた。
誠凛90-洛山92 残り5分。
ついに誠凛が、洛山に1ゴール差に迫ったのだった。
「っざけんな!んだ今の小学生でもとれるたりーパスはよ!!いいかげんにしろよ赤司テメー!!」
根武谷が赤司の襟を掴み、殴りかからんばかりの勢いで詰め寄った。
たまらず、洛山高校はタイムアウトを取る。
チームの様子を後ろから静かに見る男が居た。
黛だった。