紫原敦
帝光は相変わらずの強さを誇っていた。
特に紫原は、これまでパワーと体格で他を圧倒していただけだったが、スピードも他のキセキの世代に引けをとらないほどに成長してきていた。
試合を見ていた桃井はそんな紫原の様子をみて、まるで青峰と同じように別人の強さを手に入れていると感じた。
しかし、その成長が桃井には恐かった。
試合後、黒子と桃井は帰途についていた。
「今日の紫原君はすごかったですね。おかげで僕の出番はありませんでした」
と黒子は言った。
桃井も、黒子に同意する。
しかし黒子は続けて、同時に恐くなったと語る。
まるで青峰が変わってしまった時と同じようだ、と。
桃井は、黒子と青峰の関係を心配していた。
全中が終わってからは、何も話していないという黒子。
青峰の苦悩が消えていないことはわかっているが、どうしたらいいかわからないという。
黒子の話を聞いていた桃井は、黒子のシャツの袖を引っ張りながら、黒子に尋ねた。
「みんなバスケットが大好きで、これからもずっと・・仲良く一緒にやっていけるよね・・!?」
「・・・・・・はい。ずっと・・・一緒です」
赤司家の人間
赤司は自宅で父親と夕食を共にしていた。
「征十郎。この前部活動の大会で優勝したそうだな」
「はい。」
「学業の方はどうだ?」
「問題ありません」
学業に支障が出るようでは、本末転倒だと語る父。
一方で学業に専念しなければ首位もとれないような奴も話にならない、と続ける。
「文武両道、いや、あらゆる面で秀でていてこそ赤司家の人間だ」
「・・・・・・はい。父さん」
青峰の苦悩
ある日の練習。
青峰はチームメイトに怒りをぶつけていた。
「毎回毎回あっさり抜かれんじゃねーよ!」
手応えの無いチームメイトに対する怒りだった。
しかし、チームメイトは手は抜いておらず、青峰がすごすぎるから仕方ない、と話す。
絶望の表情と怒りの表情を見せる青峰。
「くそがっ!やってられっか!」
練習を放棄して抜けだしてしまった。
一人河原に佇む青峰。
『思わずとびだすなんてやっちまったな・・・』
以前にもサボった前科がある青峰。自身もさすがにペナルティを覚悟していた。
最悪の場合、降格もあるかも知れない、と考えていた。
『まぁ。。。それでもしゃーねぇか』
真田の苦悩
そこに、監督の真田が呼び止めに来た。
さすがに反省の色を見せる青峰。
真田は考えを巡らせていた。
指導者として、青峰のすることを不問にするわけにはいかない。
だが、今の青峰に練習を強要した場合、部をやめる危険性もある。
その時真田の脳裏に浮かんでいたのは、理事長の言葉だった。
何があってもキセキの世代を試合に出し続けること。
だが、指導者として青峰をしかってやらなくてはならない。煩悶する真田。
意を決し、青峰に言った。
「お前がいやならば・・・練習にはもう来なくてもいい・・。ただし、試合には出るんだ。出て勝てば文句は言わん」
その言葉を聞いて、愕然とする青峰。
『------------は?』
忘れちまった
雨が降る中、青峰は一人、まだ河原に佇んでいた。
そこへ黒子が、赤司の許可を得て抜けてきた、と青峰を連れ戻しに来た。
しかし青峰は黒子に言った。
「なんでだよ?何のために練習すんだよ?練習しなくたって勝っちまうのに?」
「気持ちはわかります・・・けど」
「わかる?何がわかるんだよ。教えてくれよ。お前みてーに一人じゃ何も出来ないような奴に何がわかるんだよ!」
いっそのこと黒子のように生まれていれば、自分もメリハリがあって良い人生だ、と黒子に気持ちをぶつける青峰。
黒子は、自分だって、ダンクや3Pを決めてみたい。
でも出来ないことを嘆いていても仕方ない、だから全力でパスを回す、と言った。
青峰は黒子に尋ねた。
「誰に回すんだよ?オレは一人でもどんな奴にも勝てちまうのに?」
青峰は最後に黒子のパスを受けた時のことを思い出していた。
「オレは・・もうお前のパスをどうやってとればいいのかも忘れちまった」
亀裂
練習後の体育館。
黄瀬は監督が練習後に部員に伝えたことについて、皆と話していた。
「練習に来ようが来まいが、試合に青峰っちを出すって、いいんスかねぶっちゃけ」
「監督の真意はわからないが、正直賛成しかねるな」
と赤司は言った。
そこに紫原が言葉を挟む。
今までは負けるのが嫌だったから練習に出ていたが、青峰が出なくてもいいというならオレもそうしたい。と言う。
赤司はそんなことは許可できないというが、紫原はいままでは赤司にだけは勝てないと思っていたが、最近そうでも無いかもと思っていると話す。
そして、赤司に向かって言った。
「オレより弱い人の言うこと聞くのはやだなぁ」
それを聞いた赤司は紫原を睨みつける。