「僕らはもう力を合わせるべきではないんだよ」
赤司は黒子に言った。
光と影の関係だった、黒子と青峰ですら、光が強すぎたために合わなくなっていた。
光と光の関係であるキセキの世代ならば火を見るより明らかだ、と赤司は続けた。
黒子は絶望の表情で赤司を見つめていた。
そして赤司に尋ねた。
「勝つこと以上に大事なことはないんですか?」
赤司は、帝光の理念が勝つことである以上、それ以上に大事なことは無い、という。
勝つための最善の形が変わっただけで、理念に変化は無い。
しかしそれが黒子にとって居心地の悪いものになってしまったようだ、と。
そして、居心地が悪くなったくらいで不満を漏らすようならば、覚悟が足りなかったと言わざるを得ない、と黒子に言った。
「その程度の覚悟では何も変えられない。漠然とした理想など無力なだけだ」
その言葉を聞いて、黒子は何も言えなかった。
やっとのことで絞り出したのは言葉に力はなかった。
「・・・・その通り・・なの・・かもしれないですね・・」
赤司は黒子に帝光の6人目であり続けたいなら、この状況を受け入れろと言う。
そして、辞めたいのなら止めはしない、とも。
部活の時間。
黄瀬はモデルの仕事をこなし、青峰は一人空を眺め、紫原はゲームセンターで時間を潰すのだった。
緑間は練習には参加しているものの、一人でシュート練習をするだけだった。
しかし、それでも試合になれば、帝光は圧倒的な強さを見せる。
チームプレイをすることなく、これまで以上の強さを発揮するのだった。
そこに、かつての雰囲気は無くなっていた。
3年を迎えたキセキの世代。
始業式の日、桃井は、一緒に帰ろうと黒子を呼び止めた。
黒子は桃井に青峰の様子を聞くが、桃井は、最近は一緒にいることが殆ど無い、という。
「他のみんなとも連絡事項以外全然話さないし・・・。チームは強いけどなんかちょっと・・さびしいね」
「・・・・はい」
表情を変えずに黒子は返事をした。
桃井は、黒子に聞いた。
「・・・ねぇテツ君。前に私が言ったこと・・覚えてる?」
その時桃井の脳裏にあったのは、以前、黒子に聞いた質問だった。
しかし黒子は困った顔を見せ、覚えてない、と答えた。
桃井も、大したことじゃないから、と黒子と別れた。
黒子の背中を見送る桃井。
かつて見送った、キセキの世代メンバーの楽しそうな背中を重ねあわせ、桃井は一人涙するのだった。
黒子は帰り途中、荻原からの電話を受け取った。
連絡が無いから、元気でやってるか心配だった、という荻原。
そして、次こそはインターハイで対戦の約束を守る、と黒子に宣言した。
「・・・はい。楽しみにしてます」
黒子の気のない返事を心配する荻原。
しかし黒子は何でも無いから大丈夫だ、と返すのだった。
電話を切った後、黒子は一人つぶやいた。
「本当は言えなかったことがたくさんあります。何よりボクは今日・・ウソをついて女の子を泣かせました」
そして空を見上げた。
「・・・・・・・最低です」
そして、最後の夏が来る------