赤司君臨
ゾーンに覚醒した赤司を前に誠凛の攻撃となった。
点差は12点。
ゾーン状態の赤司のディフェンス範囲は火神と同様にケタ違いの広さを持つ。
その証拠に、赤司はいつもより相当深い位置でディフェンスに入る。
「あんだけの失態の連続。赤ちんはもう周りに何も期待してないと思うよー?」
観客席で見ていた紫原がつぶやいた。
誠凛が、洛山側のハーフコートに入った時だった。
誠凛の5人は寒気を感じた。
『ウソだろ!?この悪寒・・・・まさか・・この位置でもう赤司の守備範囲に入っちまってるのか----!?』
ボールを持つ伊月は、信じられない状況を目の当たりにしていた。
次の瞬間。
赤司は伊月と木吉の間をすり抜けると同時にボールを奪いとった。
赤司の速攻!
しかしその前に火神が立ちふさがる。
『集中しろ!!止めるんだ絶対・・・しがみついてでも!!』
赤司を前に絶対に止めるという気迫で迫る火神。
しかし。
一瞬のうちに赤司はエンペラーアイでアンクルブレイクを繰り出す。
一度はそれに耐えた火神であったが、続けて繰り出される赤司のアンクルブレイクに床に這いつくばってしまう。
「滑稽なあがきだ。お前はそこで這いつくばっていろ」
上から火神を見下ろしたまま赤司はシュートを決めた。
エンペラーアイ(天帝の眼)
赤司に駆け寄る洛山メンバー。
しかし赤司はそれすら意に介さない。
「ディフェンスの時、スリーポイントには警戒しておけ。お前たちでもそれぐらいは出来るだろう。」
赤司の言葉に耳を疑う洛山の面々。
しかし赤司は、尚も言葉を続ける。
「別に期待はしていない。出来なければそれも僕がやるだけのことだ。」
誠凛にとっての脅威は、オフェンスにしろディフェンスにしろ、赤司のエンペラーアイだった。
赤司はもう味方に頼るつもりはない。
そうなれば、誠凛と桐皇との一回戦、火神と青峰の一騎打ちと状況はほぼ同じ。
火神VS青峰は実力がほぼ互角のため、点数はなかなか入らなかった。
しかし、いまは赤司が圧倒している。
単純な身体能力だけならば、得点力なら青峰、守備力なら紫原が上かも知れない。
しかし、赤司には【エンペラーアイ(天帝の眼)】がある。
未来を視る唯一絶対の能力。
これを止めることが出来なければ赤司の前に為す術はない。
火神のゾーンを超えたゾーンが、例えどんなものであろうとエンペラーアイを破るには、同じエンペラーアイでもなければ不可能に思えるのだった。
コートでは、赤司が火神のボールをスティール。
火神も赤司の前では手も足も出ない状況だった。
『くそぉっ・・・だめだ・・・!!どうやっても今のオレじゃこれ以上のプレイは出来ない・・・!!』
どうにもならないまま焦りだけが募る。
諦めませんか
火神は考えていた。
『ゾーンに入って今オレは水の底まできてる。けどそこに見えてる新しい扉がどうしても開けられない・・・!!。直感でわかる。赤司を倒すためにはこの扉を開けなきゃならねぇ。どうすりゃいいんだ・・・!!』
「・・・火神君。諦めませんか・・・・一度」
ゾーンの扉を開くために考えている火神に黒子が話しかけた。
「何言ってんだ黒子!!ここまで来て・・・」
黒子の言葉の意図を理解できない火神が黒子に反論する。
黒子の真意は、試合を諦めることではなく、火神だけで赤司に対抗するのを諦めるということだった。
火神に託すとは言ったものの、それが重すぎるのではないか?と黒子は考えていた。
「ボクも一緒に背負わせてくれませんか」
黒子は火神一人に託すのでは無く、自分にもその負担を背負わせてほしいと願いでた。
「そんなこと・・・オレだけで大丈夫だ。なんとかしてみせる・・・!もう少しで・・・・」
黒子の言葉に、自分だけで何とかしてみせると強がる火神。
しかし黒子はまっすぐに火神を見る。
その視線には決意が感じられた。
「・・・わかった。じゃあやっぱ手伝ってもらうわ。やろうぜ二人で・・・赤司を倒すぞ!!」
火神は黒子の決意に同調するように言った。
黒子は、前半ベンチで下がって気づいたことがあった。
火神と赤司の差、それはエンペラーアイがあるか無いか、ということ。
そして、その差を埋めることが出来れば赤司を倒せるということ。