反抗
「オレより弱い人の言うことは聞くのやだ」
紫原は赤司に向かって言い放った。
突然の言葉に驚くチームメンバー。
桃井が止めに入るが、赤司がそれを押しのけた。
「聞き捨てならないな紫原」
キャプテンが必ずしも強くある必要はないが、面と向かって歯向かわれた以上、赤司としても許しておくわけにはいかなかった。
赤司が紫原に5本先取の1on1勝負を持ち出す。
「少しお灸を据えてやる」
赤司が睨みつけながら言った。
その頃監督の真田は、青峰への対応を反省していた。
なぜあの時青峰にあんなことを言ってしまったのか。
なぜ、青峰を信じてやることが出来なかったのか。
後悔の念にさいなまれていた。
赤司征十郎の覚醒
赤司と紫原の勝負は、紫原4-赤司0 で紫原が圧倒していた。
あと一本紫原が決めれば勝負は決してしまう。
緑間は勝負の様子を信じられない気持ちで見ていた。
これまで赤司はあらゆる勝負で勝利してきた。
練習中であっても、そうすべき時以外負けた姿は見たことが無かった。
その赤司が、目の前で負けようとしている。
紫原は赤司に言った。
「もっと苦戦するかと思ったけど、こんなもん?やっぱ言うこと聞くのはムリかなー」
赤司はその言葉を聞いて自問した。
『オレが・・・負ける?』
赤司にとって負けるということはあり得ないことだった。
どんな相手であろうと、何があろうと赤司征十郎にとっては勝利が全て。
勝者は全てが肯定され、敗者は全てが否定される。
その時、赤司の中の何かが目覚めた。
「すべてに勝つ僕はすべて正しい」
直後、赤司の目の色が変わった。
紫原が赤司を抜いたと思った瞬間、紫原の手からボールが弾かれるのだった。
勝利するために
「ちょっ・・今何が起きたんスか!?」
勝負を見ていた黄瀬は何が起きたのか全くわからなかった。
黄瀬だけではない、緑間にもその状況がつかめなかった。
桃井は赤司の変化に気づいていた。今までの赤司ではないことに。
転がったボールを拾いながら、赤司は諭すように紫原に言った。
「少し調子に乗りすぎだぞ敦。あまり僕を怒らせるな」
そして紫原を冷たい目で見下す。
「僕に逆らう奴は親でも殺すぞ」
勝負は赤司の勝利で終わった。
紫原は明日からも練習に来ることを伝え、その場を立ち去ろうとした。
しかし、赤司は
「好きにするといい、試合に勝ちさえすればな」
ざわつく緑間や黄瀬を尻目に、赤司は続けた。
「試合で勝てば文句はない。僕達にとって、チームプレイは邪魔なものでしか無い」
紫原との1on1で、自分たちのレベルでは力を合わせずにやったほうが効率が良い、ということを見出した赤司。
勝つために選手が最大の力を発揮するにはチームプレイは邪魔だと言うのだ。
テツヤ
全員が更衣室去り、体育館に一人残る赤司のもとに黒子が戻って来た。
落ち込む黒子の様子をみて、赤司は言った。
「その顔はどうやら、だめだったようだね。」
「・・・・はい」
「ならばもう・・・しょうがないな。青峰のことはもう諦めろ」
黒子は信じられないという表情を浮かべた。
あの時自分を送り出してくれたのは、他でもない赤司だった。
しかし、その赤司が、もう青峰のことを諦めろと言う。
黒子は目の前の事実を飲み込めない様子で赤司に聞いた。
「キミは誰・・・ですか?」
不敵な笑みを浮かべて赤司は答えた。