こっからだぜ
黒子がパスをスティール!
すぐさま誠凛がカウンターを仕掛ける。
黒子、火神のツーメン。
対応するのは葉山と実渕。
ディフェンスの葉山は疑念を抱く。
どうしてスティールされたのか?黒子の影の薄さという特性が戻ってきたのか?
もしそうだとすれば、この場面でバニシングドライブを使われる可能性がある。
考える葉山を見透かすように、黒子は火神にパスを出す。
葉山は考えがまとまらず、反応が遅れた。
火神は実渕の上から渾身のダンクを叩き込む。
スコアは誠凛48-洛山69 なんとか誠凛は食らいついていた。
火神は黒子と拳を合わせる
「まだまだぁ・・!こっからだぜ洛山!!」
新型の墓穴
洛山の選手も、会場の観客も、なぜ黒子がスティール出来たのかわからぬままだった。
そして誰よりも不思議に感じていたのが黛だった。
『そんなことありえない・・!!存在感のあるなしなんて自分でどうこうできるもんじゃない』
そして黛がボールを受け取り、黒子と対峙した時だった。
「来たぞ洛山の5番!!黛だ!!黛の1on1!!」
観客の声援が聞こえた。
黛はハッとした。そして黒子に言った。
「まさか・・・テメェ・・・上書きしたのか・・!!オレに・・・!!」
黛の言葉に、黒子はじっと視線をぶつける。
黒子は、黛が自分より目立つように仕向けたのだ。
わざと黛に抜かれたのもそのためだった。
黒子の特性は影の薄さ。
その特性は、光に例えればまたたくようなかすかな光だった。
それが、強力な技を身につけることでその光が強くなった。
しかし、すぐそばに突然大きな光が現れれば、再び小さな光は見失いやすくなる。
ミスディレクションオーバーフローと理屈は似ている。
旧型と同じ特性を持ち、旧型より高性能の黛だからこそ掘らされた墓穴だった。
これ以上目立てない黛は、葉山にパスを回す。
葉山はシュート体制に入るが、突然寒気を感じる。
そして葉山のシュートは外れてしまうのだった。
黒子の策
さっきまでコート上にいた選手、黒子が、突然姿を消した。
そして、どこからスティールを狙ってくるかわからない。
この状況は、洛山に大きなプレッシャーを与えていた。
誠凛にとって、オフェンス以上にこの効果は大きかった。
そして、黒子はミスディレクションの誘導パターンも少しだけ変えていた。
いつも目線で誘導する状況では身振りで、身振りで誘導する状況では立ち位置で。
ここまで洛山の選手が黒子を見失わなかったのは、黛がそのパターンを完全に再現していたからであった。
だからこそ黒子は、洛山の選手が耐性のないパターンに変更したのだった。
だがそれでも、赤司は揺らがなかった。
今度は赤司が誠凛のボールをスティールし、洛山の攻撃に移る。
そしてついにこの男が再び赤司に立ちはだかる。火神だ。
再び宿る光
『黒子・・・つくづくお前はすげぇよ。お前が立ち上がってなかったら、もしかしたらオレもあそこで諦めてたかもしれねぇ・・・』
そして火神の目つきが変わる。
『だから・・・今度こそもう、もう消させねぇよ絶対・・・!お前がつけた希望の光を・・!!』
火神は目の前の赤司に向かって吠えた。
「勝負だ!!赤司ぃ!!」
その目には、光が宿っていた。