何度でも
黒子のパスから、アリウープを決めた火神。
最後の最後で、誠凛は逆転を果たし、ウインターカップ優勝を決めた。
ウインターカップ史上初めて、洛山以外の高校が頂点に立った。
そして、その最強の王を討ったのは創部わずか二年目の奇跡の新生、誠凛高校だった。
「おおおぉおおぉお!!!」
「やったぁあ-------------!!!!」
火神と黒子が叫び、チーム全員で喜びを分かち合う誠凛高校。
一方でその様子を外から見る洛山高校には、呆然とした悲しみが漂っていた。
『・・・・負けた。生まれて初めて・・・。これが敗北・・・。フッ。ひどいな・・形容し難い旨の痛みだ。とても整列まで平静を保つなど出来そうにない。だが・・・だからこそ思う。バスケットをやっていてよかった。そして・・お前に出会えてよかった。』
生まれて初めて敗北を味わう赤司。
「お前の・・・いや、お前達の勝ちだ。おめでとう」
赤司は黒子の前に立ち、手を差し出しながら言った。
その眼に、うっすらと涙を浮かべながら。
そしてすぐに表情を引き締め、続けた。
「・・・そして、覚悟しておけ。次こそ勝つのは【オレ達】だ」
赤司が、【オレ】という一人称ではなく、【オレ達】というチームを含めて言ったことに、黒子は少し驚きの表情を見せた。
「・・・・・はい。またやりましょう。次も、その次も、何度でも------」
黒子もその眼に涙を浮かべながら、赤司とがっちりと握手を交わした。
黒子は、自分のバスケを赤司に示すためにバスケを続けてきた。
そして今、赤司にそれを示すことが出来たのだ。
『これで全てが終わったわけじゃない。むしろ始まったばかりだ。これから何度でも、ボク達は戦える。大好きなバスケで何度でも-------』
次を目指して
「ウィース。・・・ってアレ?今日先輩たちは・・・」
火神は体育館につくと、日向達がいないことに気付いた。
「バッカ何言ってんだよ火神----。木吉先輩の見送り!」
「ボケすぎだろもーいくら本人が見送りいいっつったからって・・」
降旗たちが口々に火神に答えた。
木吉は膝の手術の為、アメリカに渡ることになっていた。
これは火神の師匠であるアレックスの助言によるものだった。
「それより練習どうすんだ?」
「もしかして休み?」
一年生達が口々に言うと、突然拳が後頭部に飛んできた。
「んなわけあるかダァホーーー」
見送りから戻った日向だった。
「今時海外なんて、連絡はメールですぐできるし行くのも難しいことはなんもねー。今生の別れじゃあるまいし、サクッと見送ってきたわ!」
早い戻りの言い訳をするかのように日向が言った。
「一番感傷的になって口数少なかったの日向だけどね」
すかさず伊月が日向に突っ込みを入れる。
「そんなことよりさっきのは聞き捨てならないわねー。練習休みですって?いつからそんなヨユーこけるようになったんじゃワレコラガキ共ああん?」
リコがにこやかに怒りの表情を浮かべて一年生を叱りつける。
そして新学期になって新入生が入ってきたら、また屋上宣言をやる、と公言するリコ。
当然ながら、前よりも目標は高く。
つまり、連覇しか誠凛の目指す道は無いのだ。
「他のチームはどこも新体制でとっくに練習開始してるし、有望な選手に声をかけて補強も進んでいるそうよ!!ウチだけのんびりしてたらすぐ差がついちゃうわ!!さあ!!練習始めるわよ!」
リコは他の選手も鼓舞するように檄を飛ばした。
しかし、黒子がまだ来ていないことに気付く。
そして黒子を探しに火神が部室に向う。
誠凛高校バスケットボール部
「おーい、黒子ー。何たらたらやってんだ早く・・・・あれ?どこ行ったんだアイツ・・・」
部室に戻り、中を見渡したが黒子の姿が見えず、不思議に思う火神。
「呼びましたか?」
「うわぁあっっ!!!」
突然黒子に背後から呼びかけられ、驚く火神。
「すみません。ちょっと桃井さんから写真を取りに行って遅くなりました。」
「あーお前の誕生日に企画したっつー・・・・じゃねーや、練習!行くぞ!!」
黒子の話を理解し、その話を思い出しながら続けようとした火神だったが、練習が先だと言わんばかりに黒子と駆け出した。
部室の黒子のロッカーの内側には、一枚の写真が貼られていた。
それは、奇跡の世代全員との集合写真だった。
「おっせーぞ黒子!!よおしじゃあ練習始めんぞ!!」
日向の声が響く。