第3Q終了―誠凛
第3Q(クォーター)を終了し、二分の休憩となった。
点差は20点差。
残すは第4Qの10分間のみ。
第3Qで誠凛は怒涛の追い上げを見せたかに思えたが、点差は意外にもそれほど縮まっていない。
観客も、誠凛の選手たちもそう感じていた。
善戦はしているが点差は縮まらず、力の差を思い知らされるが、誠凛は諦めていない。
「日向・・・出るのか!?」
伊月が、ベンチに座り靴紐を結び直す日向に聞いた。
「ああ。4ファウルで残り10分。リスクは百も承知だ。それでも今度こそ・・実渕はオレが倒す!!」
日向が力強く答えた。
その言葉を聞き、横から小金井が日向に声をかける。
「ワリィ日向・・・オレの力不足で・・・」
「何言ってんだよ。逆だぜ。コガのおかけでオレも戦えんだ。コガのぶんまでギャフンと言わせてきてやるよ!」
日向が笑みを浮かべながら小金井に答えた。
「おう任せた!たのむよ日向!」
小金井は明るい声で日向を送り出した。
ポカリを飲みながら、小金井は一人思っていた。
『やったぜオレ!五将を倒したりはさすがにムリだったけど・・チームの役には立ったんだ!オレがもっと早くバスケを始めてたら、もっとやれたかな・・?チームのために戦えたことは嬉しい。だからこそもっと、オレはコートに立ってたかった』
涙を浮かべる小金井の顔を隠すように、水戸部がタオルを被せた。
第3Q終了―洛山
「あと10分だ。慌てることはない。このままいけばいい。」
監督の白金が、選手を集めて指示を出す。
そしてさらに続けて言った。
「ただし間違えるな。このままとはあくまで、攻めるということだ。今の点差を守ろうと思うな。最後までせめて誠凛を叩き潰してこい!!」
第4Qを前に、気合を入れる洛山高校メンバー。
赤司がそれぞれに声をかける。
「玲央。向こうは日向が出てくるようだ・・・が、4ファウルでも決して油断するな。」
「永吉。木吉の眼はまだ死んでいない。玲央同様気をひきしめろ」
「小太郎。いつまでおとなしくしているつもりだ。まだ点をとってもらうぞ」
そしてコートに出て行く赤司。
黛にだけは声を掛けることはなかった。
その様子を見て黛は思った。
「そんでオレもこのまま出ろってかい。使える間は出がらしになるまで使うなんて、ずいぶんと倹約家じゃねーの、おぼっちゃん」
コートに出ると、赤司が静かに気合を入れる。
「勝つのは洛山。絶対は、僕だ」
第4Q開始
インターバルが終了し、誠凛は小金井と日向が交代となった。
日向が気合を入れてコートへ出て行く。
「よぉし行くぞ!!」
「いやー、やっぱキャプテンがいるとしまるねっ。このまま声出しも頼むよ!」
小金井が楽しそうにその後姿を見て言った。
日向は茶化すなと反応したが、黒子もそれに反応した。
「泣いても笑っても、最後の10分です。ぜひお願いします」
黒子が日向を真っ直ぐに見ながら言った。
「改めて言うな!逆にやりづらくなんだろうが!」
日向はバツの悪そうな顔で答えたが、全員を集める。
全員で円陣を組み、気合いを入れる誠凛。
「絶対勝つぞォ!!誠凛----------ファイ!!」
「オオォ!!!」
日向の気合のこもった声に、誠凛が全員で呼応する。
ついに両者が、ウィンターカップ決勝、最後の10分の舞台に出揃った。
「・・・火神君」
黒子が火神に声を掛ける。その表情には覚悟を決めた凄みがあった。
その顔を見て火神が答える。
「まかせとけ!・・・と言いてーが正直ヤベーな。赤司の言う通り、時間の問題だ。だからって、赤司相手にゆるめるゆとりはもっとねぇ。とにかくいけるとこまでいってやるさ!」
火神も覚悟を決めた。
行くぜ洛山!!
第4Q開始早々、黒子のイグナイト(加速する)パスが炸裂。
ボールは日向の手にわたった。
そのままスリーポイントシュートの姿勢に入る日向だが、実渕がすかさずチェックに入る。
しかし、実渕の素早いチェックも間に合わないほど、日向のほうが速かった。
そのままスリーポイントシュートを放つ日向。
実渕のブロックは空を切った。
その速さに驚く実渕。
そしてボールはそのままゴールへと吸い込まれた。
「っし!行くぜ洛山!!」