ゾーン再び
火神は再びゾーンに入った。
しかしそれでも赤司にはかなわないと、多くの選手が思っていた。
試合開始とともにゾーンに入った火神は、赤司にかなわなかったからだ。
それでも、黒子が作った勢いを繋げられるのはこの男しかいなかった。
誠凛の選手全員が、火神に想いを託す。
野生
ゾーン状態で赤司のディフェンスにつく火神。
しかし、その様子をみて両チームの選手も、会場も驚きの声を上げた。
赤司から遥か遠くに距離を置き、ディフェンスに入る火神。
スリーポイントラインの外側にいる赤司に対し、火神はフリースローラインの内側に居た。
一見するとマークを外したかのようにも見える距離であった。
多少の警戒を見せる赤司。
次の瞬間、寒気が走る。
『----バカな。届くというのか、そこから・・・!!』
赤司は顔に冷や汗を浮かべるのだった。
火神は、ゾーンに入った状態で野生を目覚めさせていた。
黛千尋
攻めあぐねる赤司に対し、一人冷静な動きを見せる男が居た。
黛千尋だ。
黛は赤司からパスを受けるとそれをすかさず根武谷に通す。
黒子に上書きされ、消されたと思った影の薄さという特性は、まだ完全に上書きされたわけではなかった。
そして黛も、黒子の狙いがわかったいま、黒子がディフェンスについたところで抜かなければいいと考えていた。
『オレが影に徹すれば上書きが完成することはねぇ・・!!』
誠凛は黒子のスクリーンプレイですぐに点を返す。
そして再び洛山の攻撃。
火神を前に攻めあぐねる赤司。
再び黛が動く。
しかし今度は全てのパスコースが塞がれていた。
誠凛の選手は死に物狂いでチャンスを生かそうとしていた。
そして再び、黒子との1on1になった。
二人の影
黒子VS黛。
黒子は黛にわざと抜かせようと、執拗に前に出てプレッシャーを掛ける。
ドリブルをすればすぐに抜くことが出来るように誘い出す。
黛も、それには気づいていた。
『コイツ・・・オレが抜かないとふんでプレッシャーを・・・お前なんざ抜こうと思えばいつでも抜けんだよ』
しかし、黛は思いとどまる。
ここで黒子を抜いてしまっては、影の薄さという特性は失われてしまうからだ。
黛は抜くことは出来ない、パスも出すことが出来ない状況だった。
しかしボールを持ったまま5秒経過すれば、反則になってしまう。
黛は、パスターゲットが出来るまでひとまずドリブルでしのごうと考えた。
そして、ドリブルしたその瞬間、黛は黒子を抜き去った。
洛山の誰もが驚いた。
しかし何より驚いたのは黛自身だった。
『なんでオレは今抜いた----!?ただのドリブルで数秒つなぐだけだったはずなのに・・・!?』
そして黛のシュートは火神にブロックされるのだった。
覚悟の重さ
観客席で見ていた紫原は、黒子がわざと大きくスキを作ったことに気づいていた。
一緒に見ていた氷室が、紫原に質問する。
「そこに反射的に反応してしまったのか・・・?抜いてはいけないとわかっていたはずなのに・・?」
「頭ではわかっていたかもしんないけど、やはり本能が出てしまった。要はその程度だったってことでしょ」
紫原は冷静に答えた。
そして、同じく観客席で見ていた黄瀬がつぶやく。
「影に徹する。口で言うのは簡単スけど、実はそれはとてつもなく難しい。黛千尋には黒子っちに絶対に勝てないものがある。それは、シックスマンとしての経歴と、シックスマンとしてチームの為に戦う意志。」
コートではパスを受けた黒子がシックスマンとしての役割を果たし、木吉へとパスを繋ぐ!
黄瀬が言葉を続けた。