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黒子のバスケストーリーダイジェスト 第266Q 「誰だお前」

公開日: : 最終更新日:2014/06/29 ストーリーダイジェスト

誰だお前

誠凛90-洛山92 残り5分。

ついに1ゴール差にまで追いついた誠凛。
たまらず洛山がタイムアウトを取る。

洛山ベンチの様子をじっと見つめる黒子。

洛山高校のベンチは沈んでいた。
監督の白金は目の前の光景を信じられない様子で見ていた。
その視線の中心は赤司だった。

『事が起こった今でも信じられん・・・。赤司とはここまでもろい選手だったのか・・・!?点差が縮まっただけであれば動じることなどまずない。誠凛の火神と黒子。あの二人にゾーンを破られたからだ。その多大な精神的ダメージと、代償として起きたチームの不協和音。このままでは・・・』

白金は考えを巡らせ、意を決するように言葉を発した。

「・・・メンバーチェンジだ。赤・・・・」

「ちょっと待ってください」

白金の言葉を、黛が遮った。

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黛は赤司を見据え、言い放った。

「無様だな」

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驚く洛山メンバー。
黛はさらに続ける。

「慰めたりはげましたらするとでも思ったか?しねーよそんなことオレは聖人じゃねぇし。ただ気に入らなかったから文句いいたかっただけだ。あんだけ偉そうなこと言っといてお前こんなもんか。屋上で初めて会った時とは別人だ。つーか、誰だお前」

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黛は自分の思うことを口にし、赤司はただそれを聞いていただけだった。
赤司について何かを知っていたわけでもないし、ただ文句を言っただけだ。

だが結果、きっかけとなったのは、黛のその言葉だった。

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もう一人の赤司

赤司家は名家であり、赤司征十郎はその家の長男として生まれた。
由緒正しい家柄ゆえに、家訓も厳しく人の上に立ち勝つことを義務付けられ、父はこの上なく厳格な人物だった。

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物心がつくころには英才教育が始められ、その量は大人でも音を上げるほどで、赤司に自由はほとんどなかった。
そんな過酷な幼少期を彼が耐え抜く支えとなったのは、優しい母と、母が父を説得し作られたわずかな自由時間に始めたバスケットボールだった。

彼にとってバスケットボールをしている時間は何より楽しく、才能にも恵まれ限られた時間でもすぐ上達した。

だが彼が小学5年生になったある日、彼の大きな支えであった母が病で急死する。
その後父はそれを忘れようとするかのように厳しさが増し、習い事や勉強の量も増えていく。

彼にとって不幸だったのは、それを全てこなせてしまうほどの器量を持っていたことだった。
こなせばこなすほど量は増し、教育は加速していった。

そしてこの頃から、彼は不思議な感覚をもつようになる。
学校に行っている時の自分と、家にいる時の自分が何か違う。
自分がもう一人いるような感覚。

小学校を卒業後、彼は帝光中学校へ進学。
伝説的強豪のバスケットボール部に入部する。

強豪だけあり、練習はハードなものだったが苦ではなかった。
かかげる唯一絶対の理念は勝利。
だがそれもスポーツであれば当然と思っていた。

それ以上に彼にとって、思う存分バスケットボールができ、その仲間と過ごす日々は楽しかった。

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だが、二年生時。
全中二連覇を達成する前後から様子が変わり始める。

監督が病により急遽交代し、その後チームは勝利至上主義の色を強めていく。
さらに同時期、チームメイトが次々と才能を開花させ、主将である彼にも統制が出来なくなってくる。

勝利は義務となり、重荷となり、仲間の成長は手に負えなくなることへの恐怖と置いていかれることへの焦りとなった。

気が付くと、バスケットボールを楽しいとは思わなくなっていた。

それは残っていたもう一つの支えが消え、彼の精神的な負荷に逃げ場がなくなった事を意味していた。

そして—-

紫原との1on1で負けそうになった赤司は、もう一人の赤司を生み出した。

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それ以降は常にもう一人の彼が意識を支配し、勝利至上主義をさらに押し進め、全中三連覇を達成。
そして、本来の彼は意識の底へ沈みそのまま上がってくることはなかった。

はずだった。

だが、彼は自力で目を覚ます。
そして考える。

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『その気になれば・・今すぐにでも戻ることはできる。だがそれでは交代するだけだ。オレの中にもう一人が居座り続けることになる。元はと言えば幼少期から続いた精神的負荷・・・。自分の弱さが生んでしまったものとは言えあまりいい気はしないな。もう一人の自分は勝利への権化。勝利への義務が果たせなくなった時その存在意識は消滅する。ならば高校で皆と対立することになったのは好都合か。オレはただ・・待てばいい。

あいつらなら必ずオレを倒してくれるだろう。もう仲間には戻れない。オレの犯した罪はどちらにせよもう消えない。ならば罪を背負って敵でありつづける方がずっといい。』

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解放

黛の言葉を受けて、赤司は考え、同時にもう一人の自分を解放しようとしていた。
目をつぶり、これまでの勝利至上主義の自分を消そうとする赤司。

『フッ・・ダメだな。敗北の時まで好きにさせるつもりだったが・・・。できの悪い弟をもったような気分だ。もうほとんど消えかかっている。だが、いざ完全に消すとなると長い時間代わりをまかせすぎた。それに何より・・・・』

赤司は自ら監督に申し出る。

「監督。すみません・・・もうしばらく出してもらえませんか」

その様子を不思議そうに見つめる葉山。

『それに何より、相手が黒子だったからかな。プレイしたいとう衝動。勝ちたいという衝動が抑えきれない』

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赤司はゆっくりと立ち上がりながら、黛を見た。

「誰とは心外だな」

その赤司の表情を驚きの様子で見る黛。

そして赤司は笑みとともに言い放つ。

「オレは赤司征十郎に決まっているだろう」

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